ソニーが新発売したミニノートのVAIO Type Pのブロガー向けの新製品発表会がありましたので、参加しました。(開催:みんぽす)
会場は銀座のソニービルディング。
ビルにはVAIO Type Pの大きな看板が掲げられていました。ソニーのVAIO Type Pに掛ける意気込みを感じると共に、今日のイベントへの期待も高まります。
会場はソニービルディングの8F、OPUSで行われました。
イベントの内容は「ここまで公開するのか!」と言うほど密度の濃い内容でした。
まさに「開発秘話」、約4時間が短く感じられました。
以下、当日の模様をわたしの主観を交えて、備忘録として書き留めておきます。
最初にソニーのマーケティング担当者の遠藤さんからの話がありました。
この日は午前中と午後とにイベントを分けて開催したのですが、分けた理由はユーザーが体験出来るType Pの実機が15台しか用意できなかったためだそうです。午前中はアジャイルメディア・ネットワーク開催のブロガーミーティング(以下AMN)でした。わたしは何も知らずに会場に入ったので、懇意にしているAMNの方が多数いたのでちょっと驚きました。
話は鈴木さん、社内に鈴木さんが多いので愛称は「すずいち」さん。
ご本人曰く「すずきさん」と呼ばれてもぴんとこないそうです。そういえば前回のVAIO Type Tの時の開発担当者も姓は鈴木さん(愛称は「すずまさ」さん)でした。
電気PL(プロダクトリーダー)の略。機種PM(プロダクトマネージャー)の略。
1998年、VAIO F(初代)電気PLを担当、この機種がトラウマとなったそうです。営業の方からこの製品は売れないと言われたのだが爆発的に売れたので、営業の言葉が信じられなくなったからだそうです。
2006年に大きい機種を作るのが飽きたので、VAIO U(UX)を開発しました(機種PL 兼PM)。
2年ほど出向の予定が11ヶ月で戻り、こんどはVAIO Type Pの開発に入りました(機種PL兼PM)。そのため、2006年から2009年と少し間があいたそうです。
そして2009年にVAIO Type Pの発売となりました。
これまでソニーは、小さなもので革命を起こしてきました。
トランジスタラジオが一番有名です。その後もウォークマン、ハンディカム、コンパクトディスク、HDハンディーカム(TG1)などです。
VAIO Tyep Pはそうした製品の延長線上にあるパーソナルコンピューターです。ソニーがウルトラモバイルPC(UMPC)のうちのミニノートと呼ばれるカテゴリーの製品を造るとこうなる、という製品でしょう。
Type P 製品発表会で
ボス曰く、「過去にもType Uの様な小型製品が存在したがそれほど普及はしなかった。それはキーボードが使いにくかったからだ!」
この言葉は、基本に再度立ち戻ってPCの使い勝手の要である「タイプのしやすさ」「情報表示能力の高さ」に着目したということです。
わたし自身、ミニノート HP 2133を購入して使っていますが、購入する目安はキー入力のしやすさと液晶画面(正確にはディスプレイの解像度)でした。この点、ソニーのType Pと割り符を合わせたようにピタリとしています。
“ポケットスタイルPC”Type Pをどこで使ってもらいたいとソニーは考えているかというと...
「モバイルで使ってもらいたいと考えています」
そこで、モバイルに必要な機能を取捨しました。
必要な機能と不要な機能を取捨する事はエプソンのNa01 miniと発想が同じです。ただ目標がエプソンが「ビジネスユーザーが満足出来る」取捨なのに対して、ソニーは「ホビーユーザーが満足出来る」取捨という違いがあります。いずれにせよ、無駄な機能を盛り込まれるよりも思い切って省いてもらった方がユーザーとしてはありがたいです。
“ポケットスタイルPC”には何が必要かを考えると、モバイル性能をとことん追求する事が必要との結論に達しました。
つまり技術性と芸術性の総合点、フィギュアスケートの様なものです。どちらかが単独では評価されません。
本体の美しさを活かし、シンプルなラインで構成された、無駄なく美しいフォルム。
トップとボトムはフラットな形状。
使わない時にはぴったりと閉じる。
手が触れた時に自然とやわらかくなじむように、鞄の中で他のものを傷つけることのないように、角には丸みをつけている。
しかし、全体が曲線で覆われたデザインなので、ハードディスクや基盤などの配置に制約がありました。かなり苦労された様です。デザインに妥協をせずに必要な機能を盛り込んでしまうところがソニーのソニーらしさのゆえんでしょう。
デザインの制約で言うと、もう一点、液晶ディスプレイを8インチ台をキープするジャッジがありました。大きさの制約ですから、かなり厳しい条件だったと思います。
みんぽすとソニーのイベントでは恒例となりつつあるモックアップの公開です。
驚くほどの数がテーブルに置かれていました。鈴木さんもソニーの製品でもこれほどの数のモックアップを作ることはこれまでなかったと言っていました。
VAIO Type Pのデザイン、形状にいかにソニーがこだわって設計をしたかがこれでも分かります。
ちなみにモックアップは3Dから起こして樹脂で制作するので、制作にかかる時間と予算は驚くほどではないそうです。
例外はこの写真のモックアップで、外観上は製品とほとんど同じです。このモックアップになると100万円を超えるそうです。
いくつものモックアップが並んでいますが、見ているだけではその微妙な差が分かりませんので、重ねてみました。こうした自由な扱いをさせてくれるのもみんぽすとソニーのイベントの良いところです。
重ねてみると、微妙な幅や厚みの違いや角の形状の違いが分かり興味深いです。
モックアップは蓋を開けることも出来ます。特殊な作り方をしているので、一元制作で蓋が開けられるモックアップが作れるそうです。
VAIO Type Pだけでなくモックアップの制作にも興味を持ってしまいました。ぜひ、モックアップ制作現場見学ツアーをやってもらいたいです。
底面にバッテリーの出っ張りがあるモックアップです。LenovoのIdeaPadやヒューレットパッカードのHP 2133など一部の機種で底面にバッテリーの出っ張りがありますが実際に使ってみると以外に邪魔なものです。
VAIO Type Pもモックアップを作ってみて底面の出っ張りが邪魔なことを確認したのだろうと思います。
100万円のモックアップは見たところVAIOの文字が液晶ディスプレイの様に描かれているので本物と見間違うほどです。
通常のモックアップと合わせて撮影をしてみました。
可変トルクヒンジとは、ディスプレイが軽い力ですっと開き、持ち運び時にはぴったりと閉じる構造です。
ヒンジの強さと液晶のたわみ具合、液晶全体がたわんでからヒンジが動き出すのがこれまでのミニノートでした。
VAIO Type Pの可変トルクヒンジだとそれがなくなりました。
この可変トルクヒンジはカタログに掲載されている事柄なのですが、鈴木さんが特に個人的に気に入っているのであえて話したかったそうです。
開発者というのはこうしたこだわりの一点だけは話したくて仕方がないものなのです、わたしもシステムの開発をしているので心中うなずいていました。
VAIO Type Pはわたしも何度も開閉して試してみましたが、驚くほどスムーズに開閉します。これまでレビューしてきたミニノートのヒンジはやや堅く、不自然な開閉感がありましたが、VAIO Type Pにはそれがありませんでした。液晶ディスプレイがたわむ感覚もありません。この開閉感はわたしもとても気に入りました。
動画の再生機能がVistaでないと動作しないからだそうです。
小さな画面に大きな解像度の液晶ディスプレイを採用しているので、解像度が細かくなってしまいます。Vistaなら解像度が上がるので、採用をしたそうです。
Vistaは動作が重くあまり評判がよくありませんが、このような利点があるとは知りませんでした。わたしのHP 2133もWindows Vistaが搭載されていましたが解像度がほかのミニノートに比べて1280pxと大きいのもVistaを採用した理由の一つかもしれません。
話の中で、Windows XPの導入について検討をしているといっていました。Windows Vistaではどうしても重いという評価がユーザーから下されれば、Windows XPを搭載したVAIO Type Pが発売されるかもしれません。
インスタントモードで出来ること。
ネットワークの設定、画像や動画の閲覧、SDHCカードやメモリースティックからのデータの読み込み、ミュージック、ビデオ、Webブラウザ、Skypeなど。
OSはLinuxの上で動いていので、動作が速いです。
その代わり、テキストはVista上で作動させるのでインスタントモードでは入力ができません。
動画の再生などに利用方法が限定されています。
この点はソニーの方でも認識はしていました。テキストそのものはメモリーやCPUはさほど喰いませんので、何とか動作させる工夫を模索しているそうです。
VAIO Location Search [VIATA用]の採用でGPSおよびPlaceEngineからハイブリットに現在地情報を取得出来ます。
具体的には屋外ならGPSで位置情報を取得、GPSの電波が届かない屋内ではPlaceEngineから位置情報を取得します。
欠点としてはPlaceEngineの精度が悪いので、屋外で現在位置の把握には不向きなことが上げられます。あくまでもGPSの電波が届かない屋内向けの機能と割り切りが必要です。
写真はわたしが実際にオフライン、GPS無しの状態でPlaeceEngineだけで歩いた位置情報を記録したものです。ほとんど道上に歩いた軌跡が描かれていません。
位置情報とは経度緯度を指します。つまり、自分がいま何処にいるかをVAIO Type Pが把握してくれます。この位置情報を元に、オンラインであればPetaMapと連携をして周辺のスポット情報を表示してくれます。いま自分のいる位置の周囲に何があるのかをPetaMapが教えてくれる機能があらかじめ内蔵されています。
バンドルソフトもモバイルを前提にしたものだけをインストールしていること。
「これはいい」ではなく「これがいい」とコンシューマに思われたい製品。
ポケットスタイルPCとは...本当に外で使えるPCであること。
とことん分解されたVAIO Type Pの各パーツがテーブルの上に並んでいました。これ以上は分解出来ないと言うところまで、ばらしてあります。
わたしは機械類を分解するのが大好きです。最初に購入したパソコンのMacintosh Classic IIは専用工具も購入して分解して遊んだことがあります。これまで10台以上のPCを購入してきましたが、ボディーを開けなかった機種は一台もありません。全てボディーは開けて中を見ています。
これが筐体です。驚くほど軽く、驚くほど強度があります。手で軽くねじってもねじれないほどでした。
キーボード。ねじると大きくたわみますが、筐体に取り付けることでがっしりとしたタイプ感が生まれます。もちろんねじれません。ただ、少し強くタイプをするとたわむのが気になりました。たわむといっても東芝のdynabookほどひどくはなく、許容の範囲です。
マザーボード。手の平に乗るサイズです。2GBのメモリーがオンボードで載っているのが見えます。
CUPは中央の大きな四角形ではなく、右側の四角形です。驚くほどちいさいです。
最小最軽量と言われたVAIO UXのマザーボード(上)と大きさの比較。VAIO Type Pはこれほど小さくなりました。
マザーボードにサブ基盤を取り付けて、携帯電話とミントの箱と大きさ厚みを比べてみました。
右インターフェイス基盤。基盤からフィラメントが直接出ています。
普通はソケットで繋ぐのですが直接基盤からフィラメントを出せるようになったことが小型化に大きく貢献したそうです。もう一方にソケットが付いているのは、着脱しなければならないからです。
サブ基盤。
サブ基盤とマザーボードを繋ぎます。
なぜ、サブ基盤とマザーボードを別々の基盤としてあるかというと、細かな部品は微妙にサイズが違っていて、高さが高い部品もあります。そうした部品を1つの基盤に載せてしまうと、全体的な高さが高くなってしまいます。
分割してあれば、一方の基盤にだけ高い部品を載せて高さを吸収することが出来ます。
素人考えでは一体式の方がコンパクトになると思いますが、開発現場ではこの様な細かな配慮が必要です。
左インターフェイス基盤
3つの基盤がフィラメントで接続されています。
中央の小さな基盤は設計の途中で必要に迫られて追加した基盤だそうです。
あとから追加された基盤はとても小さいので開発者達に「オヤジの書斎」と呼ばれているそうです。
「オヤジの書斎」基盤を追加したおかげで、3つの基盤が折りたためてコンパクトにボディーの中に収納出来るようになりました。
ハードディスクドライブ。
四角の角に緩衝材が取り付けられています。落下などの衝撃や、満員電車で押されてPCがゆがんだ時のねじれも吸収してくれそうです。
話はソニーマーケティング株式会社の佐藤さん。PetaMapの運営はソニーマーケティングが行っています。
ハードでは対応できない部分をソフトがカバーする、その一つがPetaMapです。このイベントでは参加者が実際に銀座の街へ出て、PetaMapを試す時間が用意されていました。そのため、PetaMap(あるいはプロアトラス)とVAIO Type Pの連携の具体的な使い方の説明がありました。
ユーザーはオンラインで使うとは限らない、オフラインでも使う場合があります。オフラインでも位置情報を把握できるようにハードとソフトが対応しています。プロアトラスがインストールされていることなどのことです。
VAIO Type Pの特徴の一つはオフラインでもそばに何があるか検索出来ることにあります。例えばオフラインの状態で公共無線LANの位置をVAIO Type Pなら検索してオンラインにする事が簡単に出来てしまいます。だた、この機能は東京など大都市圏に限るのではとわたしは思います。
インストールされている「x-Rader」で無線LAN、カフェ、ラーメンなどをあたかもレーダースコープの様に点で表示する機能があります。写真はx-Raderでカフェを表示させたところです。
x-Raderはクリックをすると拡大して見やすくなります。レーダーの表示範囲も「徒歩」「自転車」「車」の3つに合わせて変わります。写真は無線LANを大きく表示させたところです。
キーワード検索で「パスタ」などを入力すると、そのキーワードに該当するポイントがレーダー上に表示されます。
表示されたマーカーをクリックするとポップアップウインドウが立ち上がります。
ポップアップウインドウをクリックするとオンラインならPetaMapが立ち上がります。
オフラインならプロアトラスが立ち上がります。地図上で確認が出来るようになるわけです。
地図上にマーカーの位置を表示します。
惜しむらくはPetaMapやアトラスマップと連携をしていないことでしょう。ハードとソフトを融合させるのは難しいですが、双方を提供しているソニーなら可能ですので、ぜひ実現をしてもらいたい機能です。
発売前の製品ですので、「壊すことはあっても無くすことがないように」と念を押されてから、各自、思い思いにOPUSを後にして銀座の街中へと消えて行きました。
わたしは最初から行く目的地があったので、VAIO Type Pとプロアトラス、PlaceEngineの測地情報を頼りの昭和通りなどを歩いていました。
PlaceEngineの測地情報は屋外に出てしまうとかなり不正確で、実際の位置を表示してくれませんでした。
土地勘があるので迷うことはありませんでしたが、PlaceEngineの測地情報だけを頼りに知らない土地を歩くのは不可能で、やはりGPSとのセットが望ましいと分かりました。
驚いたのは液晶ディスプレイの見やすさです。暗い夜道を歩いていますが、よく見えました。
話は末吉隆彦さん、2007年にKoozyt(クウジット)株式会社を起業、PlaceEngineを開発している方です。
元ソニーの社員の方だそうです。
ソニーではバイオノート初号機(PCG-805/707のソフト開発を担当)、VAIO C1などの開発を担当されました。
PlaceEngineはWi-Fiなど無線LANの情報を元に位置情報を取得するシステムです。屋内のようにGPSが使えない環境で威力を発揮します。ちなみにOPUSでPlaceEngineから位置情報を取得すると、住所だけでなくソニービルディングの8Fにいることまで分かります。
みんながPetaMapを使わない理由は…?
動作が重い、情報量が大都市圏に偏っていて地方都市では使えない、iPhonがあるので必要性を感じない。etc…。
一同に並んだVAIO Type P。
わたしが選んだのはグリーンです。
ホワイト。一番指紋が目立たない色です。
レッド。一番艶やかな色です。
Sony VAIO Type Pの商品詳細のURL
http://www.vaio.sony.co.jp/Products/P1/
この記事はレビューポータル「MONO-PORTAL」にトラックバックしています
1/13 2009 TREviewへのリンクを追加しました。
■この記事を評価して、関連の人気記事もチェック!
★★★★(素晴らしい)
★★★☆(すごい)
★★☆☆(とても良い)
★☆☆☆(良い)
by TREview
SonyStyleでSONY VAIO Type P
を購入する。
楽天市場でソニー バイオ タイプ Pを探す。
Yahoo!ショッピングでソニー バイオ タイプ Pを探す。
mizunuma 1月 11th, 2009
Posted In: 参加レポート・ブログ・ブロガーミーティング