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Wristable GPS SS-500と登山

Wristable GPSにとっては少し過酷な旅でしたが、8泊9日をかけた北アルプスの縦走登山にSS-500を持って行きました。
毎日9時間前後、9日間も使用していると、SS-500を登山で使う際の良いところも悪いところも全て見えてきます。
結論を先に言うと、登山で使用すると、使える機能は限定的となります。いくつかの機能は全く使えなくなるか、役に立ちません。
それでも、身体に負担をほとんどかけずにGPSによる歩いた軌跡(トラックデータ)を取得出来るのは魅力的といえるでしょう。

以下、Wristable GPSを登山で使った際のレビューです。

今回の登山のルートについて

登山と言っても様々です。
高尾山や富士山に登るのも登山ですが、今回の登山はそういった可愛らしい登山ではなく、日本の脊梁山脈を18kg以上の荷物を背負って日本海まで歩くというものです。
所要日数は9日、途中には後立山連峰の八峰キレットと不帰キレットの難所があり、暴風雨にも出会います。日程の都合で1日12時間以上を歩いた日もあります。

登山のルートは、岐阜県の奥飛騨温泉郷の中尾温泉から入山をして、笠ヶ岳から鷲羽岳を経て、北アルプスの山脈を北に日本海の親知不までを歩きました。日本で最も長いと言われる縦走路を、南の端から北の端まで歩いたものです。

登り始めの初日と下った最終日以外は、全行程で2000m以下の標高に下ることはありません。最高地点は水晶岳(黒岳)の2986mで、行程の大半は2500m以上の標高を保っていました。
9日間で歩いた距離は152.49kmになります。
最低気温は白馬岳の山頂の0℃。風速は推定ですが20m/sを超えていたでしょう。体感温度は-20℃以下と言うことになります。

8泊は全てテント泊です。背負った荷物の重量は毎日補給をする水を除いて約14kgから約16kgでした。(出発日16kg、帰宅時14kg)
水は、日によって若干の違いがありますが、平均すると出発時に約2Lを背負います。(水の補給が期待できないルートを歩く日は3L)
つまり、朝の時点での背負う重量は、16kgから18kgと言うことになります。
数字に幅があるのは、食料を毎日食べるので、少しずつ重量が減って行くからです。

具体的なルートと標高、距離の情報は北アルプス縦走を参照ください。

登山で使える機能

エプソンのWristable GPSシリーズは、ランニングに特化した腕時計の形をしたGPSです。
ハイキングやカヌーやスキーなど、アウトドアシーンでの使用をエプソンでは謳っていますが、実際のところはどうでしょうか。

Wristable GPSではいくつものデータを計測出来るのですが、現場の登山で役に立つ情報は、「標高」「経過時間」「ラップタイム」「現在時刻」だけでした。

わたしは登山では必ずGAMIN eTrekと言うハンディGPSを持って歩くので不自由はしませんでしたが、「標高」「経過時間」「ラップタイム」「現在時刻」だけしか得られないのであれば、持ち歩くメリットはあまりないといえるでしょう。
登山で最も重要な「方位磁石」の機能だけでも持たせて貰いたいと思います。

下山後に、Wristable GPSからGPSログをエプソンのNeoRunにアップロードしました。
GPSの位置情報は誤差は少ないのですが、電波の受信が所々で途切れています。
登山と言うフィールドに限ってですが、自分の歩いたルートの経度緯度と標高の正確で完全な位置情報を得たいのであれば、Wristable GPSはまだまだ改善の余地があると言わざるを得ません。

これがNeoRunにアップロードしたGPSのトラックデータ。
オレンジ色の波線が途切れ途切れになっていますが、切れているのは人工衛星からの電波を受信できなかった箇所です。
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Wristable GPSで得るトラックデータ

最近の登山者は、スマートフォンのGPSの機能とアプリを使ってトラックデータを取得している様ですが、バッテリーの持続時間という点と充電の利便性という点ではWristable GPSに遠く及びません。
わたしのレベルでは、スマートフォンでトラックデータを取得するというのは、現時点では問題外と言っても良いでしょう。

登山の際のGPSのトラックデータを取得して地図の上に自分の歩いた軌跡を表示させるのであれば、Wristable GPSはある程度実用的です。
わたしが求めるレベルには達していませんが、一般的な登山者であれば十分に使いものになるでしょう。

これがNeoRunに取り込んで地図に表示させたトラックデータ。
奥飛騨温泉郷の中尾高原口から笠ヶ岳まで登った軌跡です。
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これは、わたしが開発をしたGoogle mapsと連携してトラックデータを地図上に表示させられるszシステムです。
トラックデータはGAMIN eTrekから取得しています。
GAMIN eTrekに比べると、Wristable GPSのトラックデータはまだまだ不完全であることが分かります。
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ラップタイムの計測

使っていて多少役立ったのがラップタイムの計測機能です。
ランニングなら、一週ずつタイムを計る機能ですが、登山で使う場合は、山小屋から次の山小屋まで、あるいは分岐から次の分岐まで、ある山の山頂から次の山の山頂まで、と言うふうに、1日のトータルの移動時間とは別に、ある特定の区間の移動時間を計測するのに役立ちました。

この機能、ストップウォッチを使えば代用できるではないかと思われそうですが、GPSのトラックデータと連動して情報を管理できるという点で、ストップウォッチとは異なります。
例えば、ストップウォッチで時間を計測したとして、得た情報を一括してNeoRunの様なシステムで管理すると言うことは難しいでしょう。
Wristable GPSでは、面倒な操作無しで全てのデータをNeoRunにアップロードでき、閲覧も複雑な操作や処理をしなくても出来ます。

これは、ラップタイムを計測してNeoRunに取り込んだトラックデータです。
右下にテーブルに囲まれて三行のデータが見られますが、この三行がラップタイムとして分割計測した時間です。
ラップタイムを計測すれば、NeoRunでは、この様にシームレスにデータを取り扱えるので、とても便利です。
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標高

登山でかなり重要なデータが標高です。
一般的な登山ではあまり必要とされませんが、縦走登山の場合は、現在位置を把握するのに地形と標高からおおよその位置を割り出す場合が多くあります。

例えば悪天候の中の尾根道を登っている場合、地図は雨の中では見られませんから、地形と標高から現在の位置を頭の中で割り出して、山頂までのあとどのくらいで達せられるか、途中の休憩場所をどこに求めるか、などを考えます。

これまではハンディGPSのデータを見ていたのですが、標高を見るだけなら腕時計タイプのWristable GPSの方が手軽です。
ポケットからハンディGPSを取り出すのと、腕時計を見るのと、大した違いはなさそうに思えるかもしれませんが、長期縦走という過酷な旅では、ほんのわずかな動作でも軽減したくなるものです。

豪雨の中でGAMIN eTrekを取り出してデータを確認しているところです。
ほんのわずかな操作でも、身体の負担になるのが長期縦走登山です。
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実際のWristable GPSで取得した標高の値の精度はどの程度かというと、GAMIN eTrekにやや劣る程度で、十分に実用に耐えられるレベルでした。
標高の誤差は、GPSの電波を受信しやすい山頂で、おおむね10m以下です。
谷筋の道など、GPSの電波が受信しにくい場所でも10mから20mの誤差でした。

防水能力

腕時計メーカーでもあるエプソンが作ったWristable GPSのセールスポイントの一つが防水能力の高さです。
今回の山旅では、暴風雨の中を長時間歩く機会もあったので、そのときにWristable GPSを腕ではなく、胸の位置に置いて、わざと風雨がかかる様にして、防水能力を確かめてみました。

貸借品をこうした過酷な状況下で使うのもどうかと思ったのですが、防水能力の確認はとても重要な項目なので、あえてリュックサックの肩ベルトに取り付けて確かめてみました。
ちなみに、同じ位置にGAMIN eTrek、REGZA Phoneも取り付けてあるので、それぞれの機器の防水能力の比較も出来ます。
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一般的な電子機器に「防水」と書かれていても、それは日常生活防水で、アウトドアシーンの過酷な状況下での防水を約束するものではありません。
良い例がわたしが使用している防水スマートフォンのREGZA Phoneです。REGZA Phoneは水の中に落としても壊れることのない防水性能を持っていますが、風速20m/s以上の暴風雨の元で使うと、ボディー内に浸水してくることが、経験から分かっています。
製造元の東芝に言わせれば、そうした過酷な状況で使うことは設計の時点では考えていなかったという事でしょう。

Wristable GPSの防水能力は、アウトドアシーンで使うのに十分な様です。
気温が0℃でも、風速が20m/sを越えても動作に支障は発生しませんでした。

リストバンドの使いやすさ

わたしは、腕時計をしなくなってから10年以上経ちます。
このため、市販されている腕時計を腕に着けると、違和感を感じます。

だいぶ前にカシオの登山用の腕時計プロトレックのハイエンドモデル「マナスル」を着けて山を歩いていたことがあったのですが、腕に感じる違和感が解消できなかったので、身につけなくなりました。

Wristable GPSも同様では無いかと思っていたのですが、リストバンドの作りがユーザーに配慮されているおかげで、9日間、違和感を感じることなく使い続けることが出来ました。

通常は、この様に腕時計と同じように身につけています。
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エプソンの開発の担当者の話では、これまで日本国内で販売されてきた腕時計形のGPSは欧米製がほとんどで、リストバンドの作りがやや粗雑なために日本人の女性の細い手首に合わない様なことが多かったらしいですが、そうした点からも、リストバンドの完成度は高いものになったようです。

リストバンドは、穴が非常に密に開けられていて、手首の微妙な太さの違いに対応できる様になっています。このおかげで手首にフィットします。締め付けられるような感覚はないし、ぶかぶかに緩む感覚もありません。
それと、素材が固すぎず、柔らかすぎないのがフィット感を向上させています。

登山では使えなかった機能

距離の計測

ランニングでは距離の情報というのがとても重要になりますが、登山ではほとんど必要とされません。
距離の代わりに重要視されるのが時間です。
この距離ですが、Wristable GPSはランニングの時の距離の正確な計測を目指して独自のアルゴリズムを採用していますが、登山のシーンではこのアルゴリズムが邪魔をしてしまい、正確な距離の算出を不可能としてます。

このアルゴリズムについてはパンフレットやWebsiteに記載はなく、ブロガーイベントに出席をしたおかげで知ることが出来ました。
GPSは、人工衛星からの電波を受信して位置情報を得ますが、どうしても誤差が発生します。
この誤差をそのままにしておくと、まっすぐ走っているのに、軌跡はジグザグに進んでいる様に記録されてしまいます。
これをWristable GPSは防ぐアルゴリズムを搭載していて、ジグザグになった軌跡を直線に修正しています。

通常、ランニングでジグザグに走ると言うことはありませんから、この機能は重宝するはずですが、登山では事情が異なってきます。
山を登る道は、急斜面に設けられている場合、ジグザグを切って登る様になっていることがほとんどです。ジグザグに道を切らないと、傾斜がきつくて人が登れなくなるからです。
ところが、Wristable GPSでは、このジグザグの道を上っている軌跡を直線に修正してしまいます。

9日間のトラックデータを見ると、標高差が大きい山に登った日ほど、距離が短くなる傾向があることがわかりました。
標高900mの中尾高原口から、標高2897mの笠ヶ岳に登った初日の距離は、実際には10.32kmを歩いているのですが、Wristable GPSでは6.62kmと計測しています。
地図で見ると、6.62kmと言うのは直線距離に近いものです。途中にあるジグザグの登り道も、沢渡の道も、全て直線に修正されているようです。

これは標高2924mの野口五郎岳の山頂直下の登山道。
山頂を経由しないで先に進む「巻き道」(左下)と山頂に登るジグザグの「登り道」(右上)の二つがあるのが分かります。
Wristable GPSは、ジグザグの道の距離の計測は出来ません。
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消費カロリーの計算

体重1kg辺りの消費カロリーは7200kcalと言われています。
1kgの体重を減らすのに7200kcalに相当する運動量が必要というわけです。
具体的には、脂肪1g辺り9kcal。うち水分が20%含まれます。
計算式
9kcal×1000g×80%=7200kcal

今回、わたしの9日間の山旅の結果、体重を3kg減らして帰ってきました。(出発時68kg、帰宅時65kg)
3kg×7200kcal=21600kcalとなります。

山旅の間に食べた食料は、全て記録しています。
9日間で食べた食料のカロリーは、21996kcalでした。

合計すると、21600kcal+21996kcal=43596kcalとなります。

Wristable GPSの消費カロリーの計算の累計は、7945kcalでした。
43596kcal?7945kcal=35651kcalが、計算上、不足していることになります。

これは、急斜面を重い荷物を背負って登り下りする登山という特殊な運動と、比較的平坦な道を負荷無し(荷物を背負わない、急傾斜を登らない等)で走るランニングの違いから生じています。

一般的に、ランニングの消費カロリーは、以下の計算式で行われます。
消費カロリー=体重(kg)×時間(h)×移動距離(km)
上り坂などの勾配は無視されます。

登山の消費カロリーの計算はこれでは求められないので、METS法で計算します。
消費カロリー=体重(kg)×時間(h)×METS係数×1.05(基礎代謝)
登山のMEST係数を8としてわたしの山旅にあてはめると
44915.1696kcal=68kg×78.633h(78時間38分)×8×1.05
となります。
摂取した食料と減量した体重を元に計算した消費カロリーと近い値がでました。
METS係数の参照

以上の様に、Wristable GPSの消費カロリー計算は、登山には当てはまりません。

バッテリーの持続時間と充電

Wristable GPSの良い点の一つに、14時間以上のバッテリーの持続時間と、USB充電器から充電できる点があります。
乾電池を利用するUSB充電器は、スマートフォンが普及しているおかげでどこでも手軽に手に入れられる様になりました。

今回の山旅では、エネループを利用したUSB充電器を使用しました。
Wristable GPSを1日使い、夜に充電をします。
このパターンの使用法で、エネループ2本で充電できる回数は3回でした。
つまり、エネループ2本で3日間使い続けられるわけです。初日は大抵は充電済みのはずなので、4日間使えると言えるでしょう。

毎晩、こうしてWristable GPSにUSB充電器を差し込んで充電をしていました。
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ちなみに、スマートフォンの東芝のREGZA Phoneも持参して使っていますが、こちらに充電するには、1回の充電でもエネループ2本では不足で、4本が必要となります。

参考までに、GAMIN eTrekの電池の消費は、おおよそ3日でエネループ4本です。
GAMIN eTrekは国土地理院の1/25000の地図の閲覧、方位磁石などの機能を使えるのに、Wristable GPSの2倍程度の電力しか消費しません。
機能から言えば、Wristable GPSの電池の消耗は、やや大きすぎると言えます。

バッテリーの持続時間は14時間以上を謳っていますが、今回の山旅では最終日に15時間以上を歩く機会がありました。
夏のサロマ湖マラソンで9時間以上を駆動し、バッテリーの残量がまだ5時間以上も残っていた実績から、エプソンの担当者は、実質の駆動時間は15時間以上と言っていたのですが、実際はどうでしょうか?

AC電源からの充電ではなく、出先でUSB充電器+エネループからの充電なので、単純な比較は出来ないかもしれませんが、駆動時間は14時間以上ありました。
正確には14時間10分53秒です。

9/23のデータ。
タイムは14.10.50とあります。
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この日は、北アルプスの北端の朝日岳から15時間7分をかけて日本海の親不知駅まで歩いたのですが、15時間は持ってくれませんでした。
わたしは、年に数回、15時間以上歩く事があるので、途中でバッテリーが切れて、トラックデータが取得出来なくなってしまうと言うWristable GPSは、使いにくさを感じます。

誤操作、誤作動の多発

9日間の山旅にWristable GPSを使っていて、一番に困ったのが誤操作の多発です。

具体的に言えば、背中に背負ったリュックサックを下ろして休憩をするときに、必ずと言っていいほど、リュックサックの肩バンドがWristable GPSの一時停止ボタンに触れてしまい、計測を休止してしまうのです。
おかげで、リュックサックを下ろすとき、左腕の手首に肩バンドが触れない様に、神経質になって仕舞いました。

Wristable GPSは各モデルとも、4つのボタンで操作を行います。
1つはバックライトのボタンなので、実際の操作に必要なのは3つです。

この3つのボタンですが、誤操作を防ぐためのガイドが設けられていないので、誤操作が多発していまいます。
日没前後にバックライトをつけて時刻を見ようとしてボタンを押したら、対角線上にあるラップタイムの計測ボタンも押してしまい、不要な位置でラップタイムを計測してしまった、と言うことも数回経験しました。

操作に信頼性が持てないので、結果、計測したデータも信頼性が乏しくなってしまいました。
これは、データの取得を目的としている場合、致命的です。信頼できないデータは利用できないからです。

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9月 27th, 2012

Posted In: GPS/位置情報システム, 携帯電子機器